震災が起こり、避難生活が続くと「震災関連死」と言う言葉が目立つようになります。

建物の倒壊や火災、津波など地震による直接的な被害ではなく、その後の避難生活での体調悪化や過労など間接的な原因で死亡すること。

復興庁の調査によると、東日本大震災における震災関連死の死者の数(平成27年9月30日現在)は1都9県で3,407人で、その中でも震災から4年以内に亡くなった人の数は3,396人となっています。

震災関連死の原因

震災関連死の原因は、避難生活での体調悪化や過労など地震による直接的な被害ではないものですが、具体的にどのようなことが原因となっているのでしょうか。

避難所生活や移動での肉体的・精神的疲労

復興庁の調査によると、東日本大震災のときの震災関連死の原因として、避難所生活での肉体的・精神的疲労が約30%、避難所等への移動中の肉体的・精神的疲労が約20%となっています。

そして病院の機能停止による初期治療等遅れが原因とされているのが約20%となっています。

避難生活では狭いスペースに大勢の人が一緒に生活することで体を窮屈にして過ごすことが多く、トイレを我慢するために水分を摂らずにエコノミークラス症候群になってしまうケースも増えます。

そして家族と離れ離れになることで精神的な疲労も重なることも原因のひとつとされています。

避難所から数時間かけて辿り着いた病院もすぐに転院となったり、避難所と避難所を数時間かけて移動したり、親戚の家などを転々としたりすることで肉体的・精神的疲労が蓄積することも震災関連死に繋がっています。

高齢者や病人などの「震災弱者」

復興庁の調査によると、震災関連死の死者のうち66歳以上が約90%であったことがわかりました。

そして、何らかの既往症を持っていた人の割合が約6割と、高齢で既往症のある人たちが「災害弱者」として、十分なケアを受けることができずに震災関連死で死亡したと言われています。

車中泊でのエコノミークラス症候群

避難所の混雑やプライバシーの保護から、車中泊をして長期間避難するケースも増えています。

車内で窮屈な姿勢を長時間取ることで血管が圧迫され血栓ができ、姿勢を変えたり歩いたりしたことが引き金となって血栓が肺などに詰まって、最悪の場合死に至ります。

トイレが遠かったり順番待ちが多かったりしてトイレを我慢するために水分を摂ることを減らしたり、そもそも飲料水自体が足りないと血栓ができやすくなります。

<参考記事>

インフルエンザやノロウィルスなどの感染症

肉体的・精神的疲労がたまると免疫機能も低下して感染症にかかりやすくなります。

実際に、阪神・淡路大震災のときにはインフルエンザが原因で死亡した人や免疫機能の低下から肺炎に罹る人増えました。

そして、衛生面において清潔な水が確保できなかったりトイレが汚い場合にはノロウィルスによる感染症を引き起こす可能性があります。

震災関連死を防ぐ対策

震災関連死を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。

それは、これらの「原因」を防ぐことが一番の近道と言ってもいいでしょう。

避難生活の中での対策

最も重要なのは、感染症対策と言われています。震災後まず行われるべき衛生対策は清潔な水の提供とトイレと言われています。さらに冬季にはインフルエンザ対策が優先される べきです。その他ノロウイルス、食中毒などへの対処も必要です。

そして、食糧、毛布などの提供や空調などの基本的な生活環境の維持を行います。

震災ストレスの 軽減策として安否確認、休息睡眠の確保、避難所への救護班、情報伝達、ボランテ ィアの見守りなども重要です。

車中泊避難者への健康管理などの情報提供も必要です。高齢者では廃用症候群(「寝たきり」など安静状態が長期に 渡って続く事によって起こる、様々な心身の機能低下等)を減らすことが必要です。後期高齢者は避難生活で下肢筋力低下や認知能力 の低下が起こりやすいので、定時的に体操したり、早期より在宅介護サービス を再開することも重要です。

  • 感染症対策(インフルエンザ、ノロウィルス、食中毒など)を防ぐための衛生面の管理、清潔な水、トイレ
  • 基本的な生活環境の維持
  • 震災ストレスの軽減
  • 車中泊避難者への情報提供や高齢者へのサポート

AEDの効果的な活用

読売新聞では、東日本大震災での29人の震災関連死の中で45%にあたる13人が深刻な不整脈によるもので、AEDの迅速な使用で救命できたかもしれないと伝えています。

東日本大震災の発生後、坂総合病院(宮城県塩釜市)で死亡した震災関連死とみられる被災者29人のうち、13人(45%)の死因は深刻な不整脈で、病院到着前のAED(自動体外式除細動器)の迅速な使用で救命できた可能性があることが、同病院救急科の佐々木隆徳医師の調査で分かった。

総務省消防庁の統計資料(H26年版)によれば、119番通報から救急車が到着するまでの時間は平均で約8.5分と言われています。

心臓の動きを正常に戻す除細動が行われるまでの時間が1分経過するごとに生存率は7~10%ずつ低下し、心臓が血液を送らなくなると3~4分で脳の回復が困難になり、10分後にはほとんどの人が死に至ると言われています。

生存率を高めるためには、救急車の到着を待つ間にも周りにいる人たちが一刻も早く、AEDを使用して電気ショックを与えることが重要になってきます。

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画像引用:オムロン『AEDとは

AEDは初めての人でも使えるようになっている

AEDは、それまで使ったことのない人でも簡単に使えるように工夫されています(使用に資格などは必要ありません)。

しかし、AED使用時と言うのは通常時とは異なりパニックになることも予想されますので、心臓マッサージを含めAEDの使い方などを消防署な講習会などで習っておくことで、緊急時にも落ち着いてAEDを使用することができるでしょう。

 参考:東京消防庁『救命講習のご案内

AEDの使用するまでの流れは以下のようになりますので(手順は4つ)イメージを覚えておきましょう。

  1. まずは意識の確認
    大きな声で「大丈夫ですか?」と声をかけて、反応がなければ救急車とAEDの手配を迅速に行います。
  2. 呼吸の確認
    胸とお腹の動きを見て、上下に動いてないようなら「呼吸停止」と判断します。
    ※呼吸が確認できた場合には、横向きに寝かせて吐しゃ物や舌でのどが詰まらないようにします。
    ※しゃくり上げるような不規則な呼吸が見られる場合にも「呼吸停止」と判断します。これは死戦期呼吸と呼ばれ、心停止のサインのひとつです。
  3. 心臓マッサージをします
    肘を伸ばし垂直に体重をかけ、胸が5cm以上深く沈むくらいに胸を押し込みます。少なくても1分間に100回以上の速さで繰り返します。
    ※参考サイト:公益財団法人日本心臓財団『心臓マッサージはどのようにするんですか?
  4. AEDの到着
    心臓マッサージを繰り返しているうちにAEDが到着します。
    AEDが到着したら電源を入れて、聞こえてくる音声アナウンスに従って操作します。
    ※電気ショックを与える場合には、傷病者に触れないように離れておきましょう。

AEDの使い方は、こちらの動画でも確認できます。

動画はセコムのAEDですが、基本的な操作方法はどこも変わりはありませんので「使い方のイメージ」を掴んでおきましょう。

身近に「どこにでもある」環境を作ることが重要

AEDのことはテレビや雑誌で見たことがある人はいても、実際に本物を見たことがある人は少ないのではないでしょうか。

今では会社やスポーツ施設など公共の場所の多くに設置されることが増えてきましたが、それでも緊急のときにどこにあるのかわからないと言う人もいるのが現状です。

個人でもAEDの購入はできますが、実際には法人や団体での購入が多いのが実情です。しかし、これが個人レベルにまで引き上がれば、震災関連死などの突然死に対処できる確率は大幅にアップすることは間違いないでしょう。

AEDは実際に使用するときに整備不良などで使用できないことがないように、日頃からメンテナンスや使用期限のチェックが必要です。しかし、最近のAEDはメンテナンスの時期や消耗品の交換時期などを自動で知らせてくれるものもあり、管理もしやすくなっています。

購入前に実際に手に触れて確かめてみたい場合には「訓練用のAED」を無料で貸し出してくれたり、見積もりも無料なものもありますので一度「AEDとはどう言うものなのか」を確認しておくといいでしょう。

震災関連死を防ぐための対策のまとめ

震災関連死を防ぐためには被災者自身の努力と言うよりも、周りの人たちがどうフォローするかにかかっています。

避難所の環境を整え、高齢者や傷病者などの震災弱者と言われる人たちをいかに迅速にフォローできるか、そしてAEDの使用に至るまでを含め考えておく必要があります。

「明日は我が身」と言う言葉がありますが、一人ひとりが少しずつ情報を共有し、実践できるノウハウを身に付けておくことで、あなた自身やあなたの大切な人を守ることができます。

震災による直接的な危険を免れても、その先にも危険は潜んでいます。

1人でも多くの人にその危険を知ってもらい、それを回避するべく方法を確認・共有していただけると嬉しいです。